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ザ・キャビンカンパニー『しんごうきピコリ』のこと

『しんごうきピコリ』という絵本はよくできている。この絵本は子どもに「交通ルールを守りましょう」というメッセージを発するものとして、基本的にはある。

けれども、それが全くお説教くさくないのだ。

現実の信号機の色(赤黄青)の意味を伝えるページは、最初の方だけ。あとは「実は・・・」とばかりに、3色以外の色が信号機に追加され、その意味について面白おかしく、そしてまじめに解説される。解説の調子は、現実の信号機のルールを伝えるところと変わらない。たとえば紫が点灯したら、ダンゴムシが道路を転がってくるのだそうだ。大事故間違いなしの大惨事である。

絵本の重心は「実は・・・」の方にある。だから子どもたちはこれを読み(聴き)ながら、さらに紹介された色以外が点灯したらどうなるだろうと想像していくだろう。『しんごうきピコリ』は可能性が広がっていく、つまり子どもが遊べる絵本だと言ってよい。
もちろん社会のルールも、子どもたちにそっと示しているわけで、ゆえに〈子どもが楽しい〉を軸にしながら〈大人も安心〉のバランス良い絵本に仕上がっている。